イザボー役/沢城みゆきさん/禁断の密告レポート
「紅一点は2か国語使い」
地下鉄で収録現場へ
社のある三軒茶屋から地下鉄に乗り込む。
目指す収録スタジオは神保町にある。
データ化された収録用の全台本は、筆者が持つノートPCの中にある。
このノートPCが盗難にでも逢えば、筆者の始末書では済まされまい。
不測の事態に備え、移動中も神経を研ぎ澄ませることを忘れない。
今回の収録は、沢城みゆき女史である。
女史には新人サムライの紅一点、イザボーを演じていただく。
声優さんの業界にそれほど詳しくない筆者でも、お名前は存じ上げている。
英語が堪能でいらっしゃることも存じ上げている。
女史は物静かな印象の方だったが、かなりの存在感であった。
「激流を制する静水」のような、そんな凄みを感じた。
収録前、女史に担当していただくイザボーの設定について説明をさせていただく。
だが女史は、設定を完璧に理解されていた。
普段、開発現場で黙々と作業しているゆえ、「会話」が得意ではない筆者にとって、これほどありがたいことはない。
その演技に隙なし
女史の演技プランもまた完璧であった。
こちらが抱いていたイザボーのイメージに相違なく、さらにそれを洗練させた演技に、ダメ出しをする隙などなかった。
女史にはイザボーとして、はしゃいでいただいたり、ガスを吸ってテンションを異様に高めた感じに振舞ったりしていただいた。
テキストだけでは成しえなかったイザボーの表情が、いくつも生まれた。
できることなら、イザボーとは袂を分かつことなく、共に往く展開を選択したいものだ。
収録終了
女史の収録が無事に終了した。
次のお仕事に向かうため、女史は足早にスタジオを発たれた。
再び社へ
明日以降に行われる収録用の資料を用意するため、筆者は一度、社に戻る。
社に戻った筆者を待っていたのは、声優業界に詳しいスタッフから送られる「沢城みゆきと会話を発生させた奴」としての羨望の眼差しであった。